「大航海」
4年 主将 佐藤亮 (FC東京U-18)
明治大学体育会サッカー部主将の佐藤亮です。
今年2度目の部員ブログ、素直な気持ちを綴りました。是非ご一読下さい。
僕らはいつだって一緒に戦ってきた。
明治大学体育会サッカー部の船はそろそろ僕たち4年生を港に下ろそうとしている。
「大海原への出航だ」
今シーズンが始まる時、監督がそう言った。
天気の良い穏やかな日もあるだろう。
激しい雷雨で船が呑み込まれそうになる時だって。
それでもみんなで進んでいくんだ。
そう言って僕たちは出航した。
天皇杯
アミノバイタルカップ
総理大臣杯
関東大学サッカーリーグ
アイリーグ
新人戦
インカレ
どんな時も一緒に戦ってここまでやってきた、そう思ってる。
勝ち続けて喜びに浸る時、負けてひどく落ち込む時、上手くいかずに悩める時、どんな時も。
優勝したらみんなで喜ぶ。当たり前だ。
いや、当たり前じゃないのかもしれない。
なぜなら大学サッカーは本気でサッカーをする人だけがやってくる場所だと思っているから。きっと、そうでない人は大学でまでサッカーをしようとは思わないだろうし。
つまり、それなりの自信やプライドを持って乗り込んできた選手の集まるところ。
自分が試合に絡まなければきっとその感情は薄くなる。みんなサッカーをしたくて入ってきたから。こんなはずじゃない。応援するために来たんじゃない。そう思うのがほとんどではないだろうか。
それでも僕たちはその気持ちをグッとこらえながら、チームの船の中で与えられた役割を全うしようとする。トップ、セカンド、リハビリ、上級生、下級生、一般生、マネージャー、自分が求めたわけではない色々なレッテルもある中で。
そうしてここまで僕たちの船は転覆することなく、この大海原で「明治大学」いう帆を掲げながら堂々と突き進んでいるんだ。
この船で世間から脚光を浴びるのは、もしかすると、いわゆるトップチームと言われる選手たちかもしれない。試合に出ている選手たち。
でも、それでも、船を動かし続けてくれるのは、船の中で地道に自分のやることを全うしてくれているその他の選手たちがいるから。
これだけは間違いない。
つまり、目立つ場所で仕事をするも船内の機械室で舵取りをするも、これら全てで僕らだ。
試合のピッチで走る、蹴る、守る、試合後のインタビュー、取材、記事に掲載される一言一句、それら全てが僕らだ。明治大学体育会サッカー部だ。選手個人のプレーでも意見でも感想でもない。これまで全部員で積み重ねてきた、経験や知識、歓喜や苦悩の代弁者である。
先日、僕たちはアイリーグチャンピオンシップを経験した。普段、応援にまわる選手たちがピッチで躍動した。結果こそついてこなかったが、あそこに明治の全てが詰まっていた気がする。悔しさ、もどかしさ、そういったものをピッチで表現する選手と普段試合に出る選手たちがそれを全力で応援する姿、親御さんたち。4年間もがき続けた同期の姿。
正直、感動した。勝敗よりももっと大事ななにかがそこにはあって、それを肌で感じた。
この船に乗って良かったな。
負けるって悔しい、心から応援するって素晴らしい、一体感ってこれか。そう思えた。
こうやって僕たちの船は何十年の歴史を受け継ぎながら大きく大きく、たくましくなっていく。
先輩たちもきっとこれを経験してきたんだな。
もっと早く、気づけたら良かったのかもしれない。だとしたら、後輩にはもっと早く伝えないと。大丈夫、今年はまだまだ終わらない。
最後、4年生として後輩に経験させてあげるものはなんだって最高にしたい。
今年が終わる時、悔しいと感じる1年でも、充実したと思える1年でもなんでもいい。そこから感じるものは自由でいい。
だからこそ、今この瞬間を大事にしてほしい。
未来に起きるその瞬間は、今が繋がって起きるから。偶然だって奇跡だって、その瞬間だけ見たらそう思うかもしれない。でもそれは、自分が作り上げてきた一瞬一瞬がそうさせているだけだ。
良いことも悪いことも、嬉しいことも辛いことも全ては過去から現在、そして未来へと繋がっている。
未来の歓喜を掴むための材料はあちこちに転がっていて、それを拾ってくれるのを待っている。逆もまた然り。
たとえ、いつまでも自分の望む結果が得られなかったとしても、評価されなくても、その原因は自分にしかない。他人にはない。そして、満場一致なんてサッカーの世界にはきっとない。世界のスーパースターだって世間からの意見は割れる。メッシやCロナウドだって、絶対はない。だったら僕らにだってないんじゃないか。でも彼らは結果を出し続ける。
そう、僕らもやり続けるしかない。自分が自分に一番厳しく、今日5人の評価を受けたら明日は10人だ。
手を抜くことなく、誰が見ていなくたって、そこにきっかけは転がっているから。
未来の歓喜を掴むためなら今の立ち位置なんて絶対に関係ない。
怪我をしていたって、試合に出られなくたって、やり続けた人にしか見えない、得られない歓喜が待っている。
僕はこの4年間で全てを経験させてもらった。
開幕デビュー、選抜、トップチーム、セカンドチーム、応援、怪我、病気、手術、色々な歓喜や苦悩の連続だった。
辛くて泣いた日もあれば、嬉しくて道で口笛を吹いた日もある。
それら全てに、それぞれのきっかけが落ちていた。気づきや学びといったきっかけが。
だから、今みんなが置かれている立場全てに共感ができる。寄り添える。
そして言える。絶対に大丈夫。
悔しいと思えたら、次こそと思って行動すればいい。
嬉しいと思えたら、またそう思えるように続ければいい。
そこから失敗や挫折が得られて、どうすればいいかと悩み、考える。そして気付く。よし、行動だ。
人生はこれの連続でしかない。
未来は、色々な形でそれを祝福するプレゼントを用意してくれているに違いない。
それがプロサッカー選手じゃなかったとしても、気づけば大きな何かを得られているはずだ。
地道にコツコツと。
どんな時でも指先は自分に。
もがくことを、苦しむことを、悩むことを恐れずに挑戦していこう。
未来に待つ歓喜を掴むために。
その瞬間のために、最後の最後まで全力で。
さあ、ラストスパート。
挑み、越えていこう。
『挑越』
長くなってしまいましたが、ご拝読ありがとうございました。
日頃から明治大学体育会サッカー部に関わる全ての皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。
そして、明治大学体育会サッカー部の今シーズンラストを、そして今後に注目して頂けたら幸いです。
【過去の記事】
「全ての人への感謝と恩返し」 1年 佐藤亮
「使命ある選択」 2年 佐藤亮
「希望の光」 3年 佐藤亮
「楽しもうや」 4年 佐藤亮